世界の森林減少に伴い大気中の二酸化炭素が増加し、地球温暖化の加速が問題になっています。
加えて、森林や熱帯林の減少は、その場所に生息する様々な生物の住処をなくし、絶滅危機に瀕することも懸念されています。
この問題に対し、海外ではコーヒーパルプを使用した熱帯雨林再生の実験が行われ有効な結果を得ました。
コーヒーパルプとは、コーヒーの精製段階で除去される廃棄物です。
今、この廃棄物を利用した自然再生の取り組みが注目されています。
この記事では、コーヒーパルプの利用と森を救う取り組みについて紹介します。
コーヒーパルプとは
コーヒーパルプ或いはポルパとは、コーヒーの果肉のことです。
そもそも、私たちが目にするコーヒー豆は、アカネ科のコーヒーの木の種子にあたる部分であり、豆ではありません。
コーヒーの木は苗木から育てられ白い花を咲かせ、楕円形の実をつけます。
そして、その実が完熟するとサクランボのように赤くなることから、コーヒーの実はコーヒーチェリーと呼ばれます。
その後、精製され、私たちが知っているあのコーヒー豆となるのです。
コーヒーチェリーはいくつかの層でできており、外側から外皮、果肉(パルプ)、内果皮(パーチ面と)、銀皮(シルバースキン)、そして種子の順番になっています。
通常、外皮の内側にあるコーヒーパルプは、精製の段階で取り除かれて廃棄されています。
コーヒーパルプを使った森を救う取り組み
前述のとおり、精製段階で取り除かれるコーヒーパルプを使い、森を救う取り組み実験が行われ、学術誌にて発表されました。
研究チームは、森林伐採された土地にコーヒーパルプがどのような影響を与えるか調べるため、放置されて牧草が生い茂った2つの区画を用意しました。
一方には約50cmのコーヒーパルプを敷き詰めて、もう一方の区画との差を調査したのです。
その結果、コーヒーパルプを敷き詰めた区画は約80%が木に覆われ、中には大きく成長したものもありました。
対して、もう一方の区画は20%の部分しか木が生えないという結果でした。
コーヒーパルプの力を借りた区画では、木の再生だけでなく土壌の豊富な栄養分や外来などの牧草の排除にも効果があるとわかりました。
2年という短期間の実験で、森の再生に効果が期待できるという研究結果出たことは驚くべきことです。
しかし、コーヒーパルプが環境などに与える問題も考慮しなければならず、今後の課題とされています。
コーヒーパルプにより木が再生する仕組み
コーヒーパルプを利用することにより、木が再生する仕組みは下記の通りです。
- 牧草などが生えた区画にコーヒーパルプを敷き詰める
- 敷き詰められたコーヒーパルプにより、牧草などの呼吸を妨げて分解する
- 土の中の微生物が枯れた牧草などを養分にし増大することで昆虫も増え、土壌が改善する
- 改善された土壌とコーヒーの層で更に肥えた土壌となる
- 肥えた土壌に昆虫が集まり、それを食べる鳥が引き寄せられ種を落とす
- 肥えた土壌で種が育ち成長を加速させる
これは、生ごみや落ち葉などを分解して堆肥化させるコンポストや、農薬や化学肥料を使用せず枯葉や藁などで堆肥を作って農作物を育てる自然栽培と似た仕組みです。
コーヒーパルプを使用するにあたっての問題点
コーヒーパルプの問題点について、紹介します。
・コーヒーパルプは不快なにおいがする
コーヒーを抽出した後のコーヒーかすには脱臭、消臭の効果がありますが、コーヒーパルプ自体は多くの人がかなり不快に感じるにおいがあります。
・コーヒーパルプに集まる害虫
コーヒーパルプに集まる昆虫は木の再生にとって必要ですが、中には害虫も含まれるため、周囲に暮らす人々にとっては大きな問題になりかねません。
・コーヒーパルプに含まれる成分が流れることによる害
コーヒーパルプには窒素やリンなどの栄養分が含まれていますが、土壌から川に流れ込めば、そこに生息する植物などに影響を及ぼすおそれがあります。加えて、コーヒーの生産時に農薬が残留していることも懸念されます。
コーヒーパルプの今後の課題や展開
コーヒーの精製過程で取り除かれるコーヒーパルプが、森の再生に有効であることについて紹介しました。
ここで、紹介した中で重要事項をまとめておきます。
- コーヒーパルプが土壌の改善及び森の再生に有効
- コーヒーパルプはコーヒーの精製段階で取り除かれる部分
- 実験では、約2年でコーヒーパルプで覆った区画の8割が木に覆われ、その成長も早かった
- 木が生えた割合は、コーヒーパルプで覆っていない区画に比べて4倍になった
- コーヒーパルプの利用は土壌の改善に対しても有効だった
- コーヒーパルプにはにおいや害虫、及び含まれる成分による影響が考えられるため実験の継続が必要
廃棄されるコーヒーパルプが森の再生に有効であることはわかりましたが、同時に考慮すべき課題も浮かび上がってきました。
今後も実験は必要ですが、環境問題に一石を投じる有効な手段として展開が期待されます。
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